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涼宮ハルヒの消失 を観て [映画と人生]

「涼宮ハルヒの消失」(2010年公開)という劇場用アニメーション作品を見る機会がありました。

実に切ないお話で久々感慨深い作品となりました。
その感動をお伝えしたく拙い文章ではありますがここに記しておきたいと思います。
ここでひとつ申し添えておきたいのが、私は谷川流氏の原作にはまったく触れていない事、つまりテレビシリーズとこの劇場版のみからの感想となるということです。

劇場版「涼宮ハルヒの消失」の物語は長門有希に生まれてしまったある「感情」が発端となっています。
そしてそこにはテレビシリーズで描かれたSOS団の面々との日々が多大に影響しています。
ですからこのテレビシリーズ28話を見ておくことが「消失」をより深く理解する為には必要だなと感じました。
劇場版ではこのテレビシリーズでのSOS団との日々の中で”バグ”が蓄積、やがて有希を異常動作させ世界の”改変”行為へと導きます。

ではその”バグ”とは・・・
長門有希とは、”情報統合思念体”なる存在から涼宮ハルヒの観察と報告を主目的に作られた”対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース”。つまりロボットやアンドロイドのような存在です。
ハルヒが”陽”であるとすれば有希は”陰”。
陰(影)の様であり、その特異能力によって団員達にふりかかる様々な問題を解決していく存在ではあるが普段は文芸部に残った最後の部員として部室で独り本を読む毎日を送っている。読書本もユニークで筒井康隆「虚構船団」、村上春樹「「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、早川書房「世界SF全集」、ダン・シモンズ「ハイペリオン」四部作などがあり実際に本作にも描き込まれている。
会話も”原稿用紙一行以上の言葉は発しない”というほど無口でおとなしい無表情な眼鏡少女。それが長門有希だったのです。
そんな有希がSOS団の”仲間”達と共に不思議探しツアーや、七夕を祝ったり、合宿へ行ったり、夏休みを過ごしたり、自主映画を作ったり、文化祭で演奏したり・・・
普通の高校生のような生活。今まで無縁だった生活。
特にキョンはハルヒに対しての理解者およびイレギュラー因子として有希には認識されていたが、そうした日々の中でキョンから投げかけられる言葉や有希自らが発信するやりとりから芽生えた特別な「感情」。
キョンと有希の交流は、
・キョンが有希に作ってあげた図書カード(涼宮ハルヒの憂鬱Ⅲ)、
・朝倉涼子の暴走からキョンを守るための壮絶な闘いの後に自分の眼鏡を再構成し忘れた有希にキョンが言う、「(眼鏡を)してないほうが可愛いと思うぞ」(涼宮ハルヒの憂鬱Ⅳ)。有希は翌日から眼鏡をかけなくなる。
・”閉鎖空間”へ迷い込んだハルヒとキョン。そんなキョンに有希はパソコンを通じて救いのメッセージを送る。
「YUKI.N>わたしという個体もあなたには戻ってきて欲しいと感じている_」
YUKI.N>また図書館に_」(第6話「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅵ」)
・ハルヒのせいで高1の夏休みを延々15532回 595年分も繰り返すはめになった時有希独りだけはその15532回 595年分の記憶を持ち皆に寄り添うことになるが、キョンはそんな長門を見て「長門、やはりお前にもあるのだろうか”独りでいることが寂しい”と思う事が」と・・・(第9話「ミステリックサイン」)
これらの事が積み重なり有希にとってのキョンは次第に”大切な人”へと変わっていきます。
有希の中に育ち始めるキョンへの思い、それは”対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース”としての有希の中の小さな”バグ”として蓄積して行きやがて飽和状態となってしまいます。そしてとうとうある日世界そのものを改変させてしまいます。
その世界とは、「有希がキョンとともに生きる世界」。「有希が望んだ世界」。

身も蓋もない言い方になるかもしれませんが、この「消失」の物語は「ハルヒという友人の彼氏を好きになってしまった少女」のお話として捉えると全体をすっきりと見渡せるような気がします。特異な存在であるが故の孤独の中、叶わないと知りながら「思い」を積み重ねてゆく有希が犯してしまった暴走、世界改変・・・
改変後の世界にハルヒの姿はなく、有希は極端に恥ずかしがり屋の少女として表情も会話もつくれるようになっているのです。
そしてぎこちなくではありますが、キョンへの思いを表現するのです。
有希の部屋からの帰り際に見せた有希のぎこちない笑顔。キョンは驚愕と言ってもいい表情をします。
世界改変の認識をあらたにすると共に、エピローグへの伏線となっているのではないでしょうか。

しかし有希の中に残る罪悪感からか、自身が仕掛けたプログラムにより最終選択をキョンに委ねてしまいます。
ハルヒとの世界か、有希との世界か・・・
そしてキョンはハルヒのいる世界への帰還を選択してしまいます。つまり有希の思いは達成できなかったのです。

こうして長門有希という少女の思いを描いた夢は消えてしまいます。
終盤、病院屋上でキョンと有希二人へ降る雪。手元で消えてしまう雪がその儚さを表しています。

そして・・・願いは叶わなかったけれどキョンの優しさと友情をあらためて再確認した有希が言います、「ありがとう」と・・・
元の世界に戻ってしまったことで有希の思いは遂げることができませんでしたが、有希の中にはまたあらたな”希望”が生まれたのではないでしょうか。

エピローグは図書館。独り有希が本を読んでいる側で小さな少年が同じく少女に図書カードを作ってあげている光景です。
有希はその二人を見つめながらそっと本で口元を隠します。きっと笑顔になってしまったのではないでしょうか。
それはキョンや仲間からの贈り物。元の世界でそれまで決して表情を変えなかった有希にそっと芽生えた「感情」なのではないでしょうか。

その口元を隠している本がジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「たったひとつの冴えたやりかた」。
この本の物語が「異星人との友情」をテーマにしていることは有希の心境を語るものになっていたのではないでしょうか。
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「涼宮ハルヒの消失」はとても心に残る作品となりました。



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コメント 1

かくかく

どうも。こちらへの書き込みは初めてになります。
毎度お世話になっていますかくかくです。先日のツイッターでの件は大変失礼しました……。

本題になりますが、「友人の彼氏を好きになってしまった少女の話」という考察、大変に感銘を受けました。
というのも僕自身、原作を読み、劇場版が好きでDVDを買ったりとした人間なのですが、長らく「消失」は『ロボットに芽生えた感情の物語』としてしか捉えておらず、こういうストレートな観方もあったんだなと気がついた次第です。

「消失」、名作ですね。
by かくかく (2013-01-20 21:35) 

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